2ちゃんねる。有用な情報が載っていることも、ネット世界の掃き溜めと忌み嫌われる事もある、超巨大掲示板。しかし、中には切々と語られる物語もある。これは、そんな少し哀しくほろ苦い、だけど温かみのある話を集めたもの。
俺は本に限らず、テレビや映画などのエンターテイメントで泣いたことは一度もなかった。卒業式で泣く感情が分からなかった。というか人が死んだときも、そんなものなんだろうとドライな思考が働くくらいだ。祖母が亡くなったときでさえ、涙は出てこなかった。正直、自分でも自分がここまで冷たい人間だったのかなとさえ思うことがある。泣くことなど、とうの昔に忘れた感情だと思っていた。一時期、それで悩んだこともあるが。どんなに悲しい物語を見ても、心のどこかで諦めにも似た情動の抑制がある。虚無主義のような寂しさ。
この『泣ける2ちゃんねる』で語られた話は、忘れていたその感情を思い出させてくれるには充分だったと思う。なぜかは、分からない。ただ少しページをめくって読んだだけで、視界がにじんだことにひどく驚いたことは覚えている。本を読んだだけでここまで感動したことは初めての事だった。
言葉には力があると思った。書かれた文章は大して推敲されたわけでもなく、書き手の思うままに書かれただけのものが大半である。起承転結の物語性があるわけでもなく、事実や想いだけが徒然と連なっているだけの文章。ただそれだけ。しかし、だからこそというべきか、それはその人の感情が文章の中に詰まっている。荒削りではあるけども、読み手に強く訴えるだけの力がある。これはプロの作家でもなかなかできることではない。文章をほとんど書いたことがない人でさえ、誰かに主張できるくらいの強い言葉を発する事ができるんだと感じた。
参照元:泣ける2ちゃんねる
書籍:泣ける2ちゃんねる 2ch+BOOKS(1)(Amazon.co.jp)
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