昨今、凶悪犯罪に関する報道で「無期懲役は死刑と比較して極端に軽すぎる刑罰」であると言われているらしい。らしい、というのは俺がテレビとか新聞を見てないからなんだが。それでもまぁ、確かにそういう認識があるのも事実。「終身刑と無期懲役は違う」というのも聞いたことがあるし、実際「仮釈放制度」についての知識を中途半端に持っているとそう感じてしまう。
そんな風に思っていた時期が、俺にもありました……。
要約すれば、以下のような現状。
- 無期懲役は世間で思われているほど甘いものではなく、90年代に再犯事件が相次いだこともあり、特に2000年以降においては、基本的に最低でも20年以上は経過しないと仮釈放されない運用がされており、「矯正統計年報」によれば、最近3年間に仮釈放を許された無期囚25人のうち、在所20年以内の者は1人もおらず、2000年以降の6年間でもごくわずかである。また、2005年の無期刑仮釈放者の平均在所年数は27年2ヶ月となっている。
- 本来、終身刑とは、刑期が終生に渡るものをいい、仮釈放の可能性がなくその刑期全てを必ず刑務所で過ごさなければならない刑のみを終身刑というわけではない。
- 法制上は、10年経過後(少年のとき無期刑の判決を受けた者は7年経過後)から仮釈放が可能な規定(刑法28条、少年法58条1項1号)となっているため、「無期懲役といっても通常7年か10年で仮釈放される」などと誤解している者も散見されるが、実態との乖離が著しく、このような誤解の蔓延は「無期懲役刑の犯罪抑止効果」という観点から考えても、極めて好ましくなく、非常に問題である。
- なお、無期懲役の場合、仮釈放を許されても、恩赦法8条または少年法59条による措置がない限り、一生「仮」のままであり、受刑者が死亡するまで保護観察という形で残刑の執行が続くこととなっているが、このことについても広く世間に知らしめる必要がある。
いわゆる終身刑とは「絶対的終身刑(仮釈放無し)」を指す場合が多いが、意味的には「相対的終身刑(仮釈放有り)」も終身刑であり、これらの誤解が蔓延するのは犯罪抑止効果の観点から宜しくない、というのが主立ったところ。これ見た感じでは特に甘いと言うほど甘くはないような気がする。
一方、懲役の長期化に伴って刑務所の維持に天井知らずの税金が使われていることも知っておく必要がある。個人的なスタンスは「慎重な死刑肯定主義」でありたい。
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