本日の驚愕ニュース。色々な意味で。
水から電流を取り出すことを可能にした新しい発電システム「ウォーターエネルギーシステム」を見に行ってきました
水から電流を取り出す「ウォーターエネルギーシステム」デモムービーいろいろ
真偽判断に役立つ「ウォーターエネルギーシステム」に対する各報道陣からの質疑応答いろいろ、そして現時点での結論(GIGAZINE)
タイトルを一目見て思ったことは「胡散臭ぇぇぇぇぇぇ!」の一言。要するに、水を供給するだけで車が走るほどの電力を取り出すことが出来ますよーって話。言葉通りの意味でそれが本当に実現可能なら、自然科学に革命が起きますよ。エネルギー保存則が成り立たないし。系の外側から見たら、電気エネルギーの分だけエネルギーの総量が増えることになります。
量子世界でのエネルギー保存則云々とかいった専門的な話はさておき、物理や化学をかじった人ならエネルギーの総和が反応の前後で保存されることは御存知のハズ。実のところ私自身は物理屋なので化学は得意じゃないんですが、はっきり言ってこれは有り得ない。このシステムの肝は一番始めの水素発生にかかっており、これ以降の反応は他の燃料電池などでもほぼ同様なんですが、触媒のみで水から水素発生というのが信じがたい。ということは、別のメカニズムでエネルギーを取り出す必要があるわけですが。
GIGAZINEさんの記事中でも『詳細が明らかにされるまでは疑似科学の範囲を出ないだろう』と仰ってますが、ごもっともなところだと思います。記事中の質疑応答の部分で発生メカニズムについて若干触れているところを引用させて貰うと、
Q:触媒反応だと水から水素を取り出すというのはなかなか難しいと思うのですが、何を工夫されたらそのようなことができるのか?
A:水から水素を発生させる反応というのは、もう100年以上前から6つぐらい化学式は知られております。何か新しい化学式を発見したわけではありません。それ以上は企業秘密です。先ほど記者の方にもお話ししたのですが、1~2年程前の製品でアクアフェアリーというのをご存じですか?NTTさんとあるベンチャー会社さんが作られたもので、携帯電話の充電用に作ったもので、水を供給すれば発電するというものだったのです。原理的には極めてよく似ておりまして、それは水にアルミ粉末を主体としたティーバッグのようなものを入れて水素を取り出すわけですね。30時間ぐらい経つとティーバッグのこしが抜けてしまうのでまた取り替えてくださいというしろものだったんですよ。基本的な考え方は同じようなものです。
言及されているベンチャー会社の製品というのはコレの模様。このことから推測するに、触媒というより単純な化学反応を言ってるのでは?と思ってしまいます。ナトリウムと水を接触させると水素と水酸化ナトリウムが発生する(ナトリウム:Wikipedia)のはよく知られていますが、まさかそういった類のモノなのでは。発電効率やコストといった面も考慮するとなるとコレだけではもう判断しようがないですが、単なる化学反応を誇張して宣伝してしまった、というオチなら納得。これが従来よりも圧倒的かつ環境コストも含めた全コストで高効率というなら、それはそれで凄い発明だと思いますが。
他にも特許方面から正体を探っている方々もおられるようで(水力発電?(お茶の水大学:冨永研究室サイト))、こちらでは電気分解による水素発生ではないか?ということ。つまりどこかから持ってきた電気で水素発生→水素と酸素を反応させて、電気+水発生、ということ。エネルギーの観点からはそのどこかから持ってきた電気を動力にすればいいじゃん、てのは至極当然ですな。確かに、「電気化学反応で水素発生」という言葉を額面通りに受け取れば、電気分解からの水素発生とも思えるかも。
いずれにしろこの発表だけで全てを判断できないと思うので、決定的な肯定となるニュースが挙がらない限りは眉唾物として対処しても問題なさげ。疑似科学が流行って久しい世の中、科学的根拠の乏しいものはしっかりと正否を判断する目を養うのが肝要ってところでしょうか。
ちなみに、光触媒を用いた水からの水素発生というのは研究として存在します。(→水素発生能力の高い光触媒を開発(産総研)、可視光で水を水素と酸素に分解(産総研)、etc.)まだ実用的な量を発生させることが難しいので、燃料電池への利用にはまだ先の話ですが、代替エネルギーへの道は着々と開発されているようですね。
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